2012年11月30日金曜日

ファンケルとDHCの訴訟について

ちょっと古い話ですが、今年5月23日に、DHCのマイルドタッチクレンジングオイルとヒットコスメミニセットが、ファンケルの特許を侵害しているかどうかについて、判決が出ました。

判決の概略は以下の通りです。

差止請求については、マイルドタッチクレンジングオイルが成分を変更し、旧製品を既に販売していないこと、ヒットコスメミニセットが季節商品で既に販売されていないことを理由に、棄却されました。

損害賠償請求については、ファンケルの7億1千万円の請求に対し、1億6569万8740円の支払を認めました。

これだけ見ると、特許権の侵害の有無については、DHCに非があるように思えます。

しかし、このDHCの敗訴(便宜上そう呼んでおきます)、実はDHC側の訴訟戦略のまずさが原因と言えそうです。

DHCはファンケルの侵害訴訟の根拠になった特許(第4358286号)に対し、2010年11月5日に特許無効審判を請求しており、2011年5月26日に口頭審理が行われております。

ファンケルからDHCに対して起こした侵害訴訟は、2011年5月31日に、双方の主張立証は終結した旨を聴取した上で、侵害論の審理を終結しております。

ところがその訴訟でDHCは、2011年12月14日になって、上記特許の無効理由証拠を提出しています。
ちなみに上記特許に対し無効審決がなされたのは、2012年1月5日です。

これに対し東京地裁は、この証拠提出は侵害論の審理終結前に提出可能であったと認定し、民事訴訟法157条1項(時期に遅れた攻撃防御方法の却下等)により却下し、その結果上記特許は有効であるとの前提で、上記判決に至っているのです。

無効審決を受けたファンケルは、審決取消訴訟を提起しており、1審敗訴したDHCも控訴しています。
裁判の係属先は、ともに知財高裁です。

ファンケルが無効審決を取り消させることができれば、侵害訴訟の勝訴は維持されると思われますが、無効審決が維持されれば、侵害訴訟は逆転敗訴となる可能性が高いです。

特許侵害を争った訴訟のポイントが民事訴訟法であったということは、DHC内部で知財担当者と法務担当者の連携があまりよくなかったのでしょうか。

まあ、無効証拠が採用されて、侵害訴訟の1審でDHCが勝訴していたとしても、ファンケルは無効審決取消訴訟を提起して、侵害訴訟についても控訴していたでしょうから、裁判自体は続いていたと思いますが、DHCは1審敗訴の汚名を着なくてもよかった可能性が大です。
限定的かもしれませんが、イメージを損なってしまう結果を招いてしまいました。