2015年8月7日金曜日

ヨネックスが商標権侵害で提訴されました

本題に入る前に、東京五輪エンブレムの件、とにかく報道が、著作権侵害についてよくわかっていません。
著作権の中の複製権の侵害が認められるためには、原著作物の模倣が要件となります。

最高裁で、「著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいう、と解すべきであるから、既存の著作物と同一性のある作品が作成されてもそれが既存の著作物に依拠して再製され たものでないときは、その複製をしたことにはあたらず、著作権侵害の問題を生ずる余地はないところ、既存の著作物に接する機会がなく、従つて、その存在、 内容を知らなかつた者は、これを知らなかつたことにつき過失があると否とにかかわらず、既存の著作物に依拠した作品を再製するに由ないものであるから、既 存の著作物と同一性のある作品を作成しても、これにより著作権侵害の責に任じなければならないものではない。(「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件」)」という判決が確定しています。
「知らないものは真似できない」ということです。

知っているか知らないかは、心の中の問題ですから、証明するのは難しいです。
類似の程度が著しければ、「知っていたのではないか」と推定されますが、原著作物へのアクセスのチャンスがどの程度であったかも、考慮されます。

オリビエ・ドビさんも、差止めしたいのであれば、似ているかどうかだけでなく、佐野さんのベルギー訪問の有無や、エンブレムがデザインされていた期間に、リエージュ劇場のロゴがどのくらい媒体に露出されていたか、などのアクセス可能性(知っていたはず)も主張しなければなりません。

なお、もう一度だけ言いますが、商標権は問題となっていないので、論じるのは混乱の元になるだけです。

商標権の問題はこちらです。
 
 ( TOUR・G社製品)         (ヨネックス社製品)
  (朝日新聞DIGITAL2015年8月7日05時00分より)


株式会社TOUR・Gは、以下の2件の商標権を所有しています。
   第5307318号            第5731112号
           
 2009/9/4出願 2010/3/5登録   2014/8/1出願 2015/1/9登録

 ヨネックス社は、以下の商標権を所有しています。
 第5385204号 VCORE(標準文字)

両社ともに、指定商品には第28類、運動用具を含んでいます。

ヨネックス社のVCORE TourGは、2014年3月から販売しているとのことで、少なくとも 第5307318号に対して、先使用権の主張をすることはできません。

 VCOREとTourGの間にはスペースがある上に、書体が異なりますから、TourG単独で商標機能を発揮していると判断されるかもしれません。
すると、 TOUR Gと商標が類似で、テニスラケット(運動用具)に使用されていますから、侵害となるおそれがあります。

ヨネックスVCOREにはしろいろシリーズがあって、TourFとか、Tour-Proとかもあるようです。
VCOREの商標権を持っているからといって、そこに何かを付加したものがすべて使用できるとは限らないのです。

ヨネックス側は、VCORE Tour Gが「外観上」「称呼上」「観念上」の一体性を備えていることを立証する必要がありますが、この際、VCOREがシリーズとなっており、VCOREのあとにTourG以外の文字が続いている製品も販売していることから、不利なのではないかと考えます。

 朝陽特許事務所所長 弁理士 砂川惠一  1040052 東京都中央区築地2-15-15 セントラル東銀座703  Tel:03-3278-8405 Fax:03-6278-8406 e-mail:info@choyo-pat.jp