2015年7月30日木曜日

これは非類似

前のblogで取り上げた、五輪エンブレムの類似問題、もうひとついちゃもんがついたみたいですが、こちらは明らかに非類似です。

配色が類似しているというだけの理由でグラフィックデザインの類否を判断していたら、そもそもデザイン自体ができなくなってしまいます。

デザインをされた方が、Tをモチーフにしてデザインした経過、コンセプトを堂々と発表すれば、摸倣でないことははっきりするので、早くきちんと発表して、くだらないネットの祭りを終息させるべきです。

 朝陽特許事務所所長 弁理士 砂川惠一  1040052 東京都中央区築地2-15-15 セントラル東銀座703  Tel:03-3278-8405 Fax:03-6278-8406 e-mail:info@choyo-pat.jp


聞かれたことに答えていない、五輪エンブレム類似問題

ベルギーのリエージュ劇場のロゴ(下図左)と、2020年東京五輪のエンブレム(下図右)の類似が問題となっています。

 

五輪組織委の広報担当者は「発表前にベルギーを含めて世界中の商標確認をしており、問題ない」と話した、とのことですが、知的財産の観点からいえば答になっていません。

ロゴを制作したベルギーのデザイン会社がフェイスブック に両方のデザイン写真を並べて投稿して、疑問を呈していますが、デザインとしての類似性、即ち、著作権の問題なのです。

商標権が問題となる場合、商標(トレードマーク)自体の類否だけでなく、その指定商品・サービスの類否も問われます。
マークが似ていても、使用する商品やサービスが異なっていれば、原則として問題にはなりません。

著作権の場合は、原著作物への依拠、即ち、模倣の有無が問題となります。

ただし、真似したかどうかは、心の中の問題で、外部からは本当のことが分からない場合が多いです。
そこで、原著作物との類似の程度や、原著作物の周知の程度などを検討し、模倣の有無を判断することになります。

私個人的な感想では、並べてみても、似ているといえば似ている、似ていないといえば似ていない。
そして、劇場のロゴは、リエージュ(Liège)のLを基にしたデザインであるのに対し、五輪エンブレムは東京(Tokyo)などのTを基にしているとのことですから、模倣の可能性は低いと考えられます。
そこで、2011年に採用されたリエージュ劇場のロゴマークが、どの程度世界的に知られていたか、が問題となります。

私は、予備知識抜きで見ると、五輪エンブレムはあまりTに見えないのですが、それはさておき、摸倣でない、ときちんと言える可能性は十分にありますので、問題をすり替えた答弁ではなく、創作物・著作物としての模倣の問題として回答すべきです。


朝陽特許事務所所長 弁理士 砂川惠一  1040052 東京都中央区築地2-15-15 セントラル東銀座703  Tel:03-3278-8405 Fax:03-6278-8406 e-mail:info@choyo-pat.jp