2012年2月19日日曜日

通販サイト上の商標権侵害の責任の所在

<画像は楽天市場「fujishop」より>

2月14日に知財高裁は、インターネット通販サイトで商標権の侵害があった場合、出店者だけでなく、一定の条件下で、「出店ページ」を提供・管理するウェブサイトの運営者にも法的責任が問えるとの判断を示しました。

平成22年8月31日になされた原判決では、被告サイト上の出店ページに登録された商品の販売(売買)の主体は、当該出店ページの出店者であって、一審被告はその主体ではない等として、一審原告の請求を棄却し、これに不服の一審原告が控訴を提起していました。

知財高裁判決は、
「たとえ出店者が販売に関しては所有権移転の主体であるとしても、
一審被告が楽天市場の運営者として展示、販売の場を提供しなければ、
「各商品が楽天市場で展示、販売」されることはなく、
したがって一審原告が独占的に有する登録商標の出所表示機能が害されることもなかったのである。
仮に、一審被告が楽天市場の運営者として真正品でない「各商品が楽天市場で展示、販売」をさせる各行為が、
「譲渡のための展示」又は「譲渡」行為に該当せず、
商標法2条3項の「使用」ではないとしても、
一審原告が独占的に有する本件各登録商標の登録商標の出所表示機能、
すなわち識別力を害するものであるから、商標権侵害行為である。」
と判示しました。

また、他の通販サイトとの比較から、楽天市場が禁制品の販売を差し止める機能を持たないことに故意または過失があるとも判断しました。

その上で、
「ウェブサイトを運営する一審被告としては、
商標権侵害の事実を知ったときから
8日以内という合理的期間内にこれを是正した と認めるのが相当である。
以上によれば、本件の事実関係の下では、
一審被告による「楽天市場」の運営が
一審原告の本件商標権を違法に侵害したとまでいうことはできないということになる。」
として、控訴人の請求を棄却しました。

通販システムの提供者は、「場所を貸しているだけだから、何が売られていても責任はないよ」とは言えないという判断で、模倣品の流通差し止めのためには適切な判断だと思います。


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2012年2月16日木曜日

JASRACへの排除措置命令が審判で取り消されました

もう2週間ほど経ってしまいましたが、著作権管理団体「日本音楽著作権協会(JASRAC)」の楽曲使用料の徴収方法が独占禁止法違反にあたるとして出した排除措置命令について、公正取引委員会が取り消す案をJASRAC側に伝えました。

公取委は当初、JASRACがテレビ局などから年間放送事業収入に約1.5%を掛けた金額を楽曲の使用料として徴収する「包括徴収」という方式を問題視しました。

著作権を扱う競合他社が管理する楽曲を放送局が使用する場合、JASRACへの支払額は変わらないが他社への追加出費が必要となるため、放送局が他社の管理楽曲の使用を控え、他社の参入を排除することになるとして、公取委は2009年2月、JASRACの独禁法違反(私的独占)を認定しました。

これに対しJASRACは、公取委に審判を請求し争っていました。

2006年10月に新規参入したイーライセンス社の管理楽曲だった大塚愛さんの「恋愛写真」について、イーライセンス社は「放送各局は追加出費を避けるため、06年10月以降、FMラジオ局を中心に『恋愛写真』をほとんど放送しなかった」などと主張していましたが、JASRAC側は「『恋愛写真』は06年10~12月に少なくとも729回放送され、放送局はイーライセンス社への支払いを追加出費であって負担であるとは考えていなかった」などと反論しました。

審決案はJASRAC側の主張をほぼ認め「放送局が追加負担を考えて楽曲の使用を控えることはほとんどなく、包括徴収が競合他社を排除するような効果があると認めるような証拠はない」と判断しました。

今回の判断について採用された時期は、リーマンショック前でもあり、放送局側も人気アーティストの曲をちょっとぐらいの楽曲使用料で控えることはなかったでしょうが、現在CMが頼りの民法各社の経営はどこも苦しく、今後はどうなるか分かりません。

そういう意味では、イーライセンス社は、参入直後の時期に、しかも立証に対し反証されてしまうような事案で戦うのではなく、じっくり待った方がよかったかもしれません。

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