2013年1月31日木曜日

知的財産を軽んじると恥をかきます

撤去されたキティちゃん神社。おさい銭箱にお金を入れる人もいた=甲府市中央1丁目
後釜に座った「招き猫」=甲府市中央1丁目
(朝日新聞digital 2013/1/30)


1月30日の朝日新聞digitalによれば、サンリオ創業者の出身地である甲府市で、甲府商店街連盟が「キティちゃん」の石像が鎮座する「キティちゃん神社」を作ったが、サンリオと使用契約を結んでいなかったため、除幕式から3日で石像を撤去させられたそうです。

「(連盟の)長坂会長によると、計画段階で『ちょっとしたほこらをつくりたい』とサンリオ側に相談したが、契約が必要とは知らなかったという。サンリオの広報は『個人的なものだと聞いていた』と説明している。」(朝日新聞digital)

連盟の狙いは商店街の活性化とのことですから商業利用であり、著作物の複製の利用には著作権者の許諾が必要なのは当然です。

初めからそのつもりできちんとサンリオと交渉しておけば、使用を差止めされるどころか、「キティちゃんお守り」や、「キティちゃん巫女さんバージョン」を販売することもできていたかも知れません(もうあります)。

そもそも「知的財産」を「財産」であるとちゃんと認識していれば、あの「キティちゃん」の石像を自作までして展示するのに「ちょっとしたほこらをつくりたい」などという雑な相談をするころはなかったと思います。
知的財産についての知識がないだけでなく、他人の創り出したものに対するリスペクトがありません。

長坂会長は今後契約できるようにサンリオ側と交渉したいとのことですが、サンリオの商売の基幹になる部分を知識としても態度としても軽んじている人が、あのサンリオとまともな交渉ができるのか。

私はサンリオの法務室長のブランドについての講義を受けたことがあるのですが、キャラクターはサンリオの生命線であり、非常に厳しく管理されています。
サンリオの協力企業になるためのハードルは相当高いです。

交渉時にサンリオが要求してくる事項の意味を理解できるのか、とても心配です。

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2013年1月27日日曜日

センター試験になぜ小林秀雄?

1月24日の朝日新聞デジタルによると、今年のセンター試験で、国語の点数がかなり低かったようです。

原因は、あの「小林秀雄」からの出題のせいではないか、とのこと。

しばらく控えられていた小林秀雄の出題が解禁された理由として、予備校関係者の談話が載っていますが、どれも抽象的というか、明確ではありません。

ここで、私なりの推測をさせていただくと、昨年の10月に、丸谷才一さんがなくなられたからではないのか。

丸谷さんは、「完本 日本語のために」の中で、国語教科書や入試問題を批判していますが、その「ⅴ 大学入試問題を批判する」に「小林秀雄の文章は出題するな」があります。

くわしくは同書をお読みいただくとして、丸谷さんは小林秀雄の文章自体を批判しているのではありません。
小林秀雄を出題する側の能力や姿勢を批判しています。

私も最近読み直してみて苦労しましたが、大変な教養人である小林秀雄は、読者のレベルも自分と同様の教養人を想定していて、引用や比喩のレベルが高すぎてついていけなくなることが往々にしてあります。

幸い、今はネット情報が充実していて、また、スマホからも検索できるので、多少は楽が出来るのですが、頭脳に対してウエート・トレーニングをしているような気分になりました。

じっくりと時間をかけて出典を調べたり、読書会を行うなどしながらならともかく、難解な文章のましてや断片を、限られた時間の中で解答する受験にはなじまないと思います。

出題者自身が、どれほど小林秀雄を理解しているというのか。
多少なりとも理解していれば、受験に出そうとはしないと、私は思います。

ご意見番がいなくなると、悪問復活では、受験生が気の毒です。


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2012年12月31日月曜日

あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。


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2012年12月21日金曜日

知的財産権との出会い

十数年前のことです。
当時勤めていた会社で、ユニフォームのデザインコンペを担当しました。

それまでの業界常識と比べ、かなり斬新なデザインが採用され、イメージ一新の効果を挙げることができました。

その頃、寒冷地の支社から、地元業者がもっと廉価に製作できるので、そちらにやらせてもいいか、との問い合わせを受けました。
即、却下したのは、いうまでもありません。

提案者は、経費節減という会社の利益になる提案をなぜ却下するのか、と不審がりました。

私は、著作物を売って利益をあげている会社の社員から、そのような矜持も大局観もない提案が出ることのほうが不審でした。

デザインに要した手間と経費だけでなく、営業担当者も含め人的投資をして、公正なコンペで勝ち取った受注を、なんと心得るのか。
そんなことを許せば、今後のコンペできちんとした提案が出るのか。

当時の私は、知的財産権関係の法律の、一文字たりとも知りませんでした。

ただ、人が創造したものの価値を認めていただけです。

特許法が保護する「発明」、意匠法が保護する「デザイン」、著作権法が保護する「著作物」。
皆、人の心が創り出すものです。
商標法が保護するのは、商標に蓄積した業務上の「信用」ですが、これも人の心が創り出すものと言っていいと思います。

知的財産権とは、「人の心が創り出したもの」を保護するものなのです。

有体物のような、目で見て手で触れるものではありませんが、とても大事なものだと思っています。

年の瀬なので、ちょっとだけ思い出話をしました。

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2012年11月30日金曜日

ファンケルとDHCの訴訟について

ちょっと古い話ですが、今年5月23日に、DHCのマイルドタッチクレンジングオイルとヒットコスメミニセットが、ファンケルの特許を侵害しているかどうかについて、判決が出ました。

判決の概略は以下の通りです。

差止請求については、マイルドタッチクレンジングオイルが成分を変更し、旧製品を既に販売していないこと、ヒットコスメミニセットが季節商品で既に販売されていないことを理由に、棄却されました。

損害賠償請求については、ファンケルの7億1千万円の請求に対し、1億6569万8740円の支払を認めました。

これだけ見ると、特許権の侵害の有無については、DHCに非があるように思えます。

しかし、このDHCの敗訴(便宜上そう呼んでおきます)、実はDHC側の訴訟戦略のまずさが原因と言えそうです。

DHCはファンケルの侵害訴訟の根拠になった特許(第4358286号)に対し、2010年11月5日に特許無効審判を請求しており、2011年5月26日に口頭審理が行われております。

ファンケルからDHCに対して起こした侵害訴訟は、2011年5月31日に、双方の主張立証は終結した旨を聴取した上で、侵害論の審理を終結しております。

ところがその訴訟でDHCは、2011年12月14日になって、上記特許の無効理由証拠を提出しています。
ちなみに上記特許に対し無効審決がなされたのは、2012年1月5日です。

これに対し東京地裁は、この証拠提出は侵害論の審理終結前に提出可能であったと認定し、民事訴訟法157条1項(時期に遅れた攻撃防御方法の却下等)により却下し、その結果上記特許は有効であるとの前提で、上記判決に至っているのです。

無効審決を受けたファンケルは、審決取消訴訟を提起しており、1審敗訴したDHCも控訴しています。
裁判の係属先は、ともに知財高裁です。

ファンケルが無効審決を取り消させることができれば、侵害訴訟の勝訴は維持されると思われますが、無効審決が維持されれば、侵害訴訟は逆転敗訴となる可能性が高いです。

特許侵害を争った訴訟のポイントが民事訴訟法であったということは、DHC内部で知財担当者と法務担当者の連携があまりよくなかったのでしょうか。

まあ、無効証拠が採用されて、侵害訴訟の1審でDHCが勝訴していたとしても、ファンケルは無効審決取消訴訟を提起して、侵害訴訟についても控訴していたでしょうから、裁判自体は続いていたと思いますが、DHCは1審敗訴の汚名を着なくてもよかった可能性が大です。
限定的かもしれませんが、イメージを損なってしまう結果を招いてしまいました。

2012年10月12日金曜日

知的財産権の登録は、転ばぬ先の杖

朝日新聞デジタル(2012年10月7日03時00分)によると、「B―1グランプリ」の人気料理のまがいものが横行しているそうです。

まちおこしに取り組んでいる団体とは無関係な店が、各地の祭りやイベントの露店などでまがい物を販売している場合があるそうです。

団体が定めたレシピなどを守らないので、苦情や問合せが多数寄せられているところもあるそうです。

そこで、ようやく地元の商工会議所などが、商標登録出願を始めて、今後の模倣品販売の歯止めとしようとする動きが進んでいます。

その一方で、B-1グランプリが始まる前から商標登録を済ませているケースもありました。

どちらが模倣品の被害を受けにくいかはお分かりと思います。

自己の商品の信用を大事にしようとするならば、売り出す前から商標登録を検討すべきです。
その際に、既に類似の商標が類似の指定商品について登録されているのを発見できる場合もあります。

それを見過ごして製造販売していると、自己の行為が商標権侵害で訴えられる可能性もあります。

新商品や新サービスを始めようとしている方、新たに法人や個人商店の立ち上げをご検討中の方、お気軽に当方までご相談ください。

初回の相談料は無料です。

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2012年9月21日金曜日

知財判決2件「サトウの切り餅」と「セイロガン」

昨日の判決2件について述べます。

サトウの切り餅については、今年の3月23日にも書きましたが、佐藤食品工業の上告を最高裁が棄却し、知財高裁の判決通り確定しました。

(朝日新聞デジタル2012年9月20日23時13分より)

佐藤食品工業にとってちょっと気の毒だったのは、越後製菓の当該発明の特許出願時の明細書が、煩雑で理解しにくかったことでしょうか。

とはいえ佐藤食品工業は、越後製菓の製品が販売されていることを知っていたわけで、強気に出る前に検討の余地はなかったのかな、と思います。


大幸薬品は、キョクトウが「セイロガン糖衣A」と外観がよく似た薬を売るのは違法だとして、大阪地裁に製造販売の差し止めを求めていましたが、類似しているとはいえないと判断されて敗訴しました。

(朝日新聞デジタル2012年9月21日より)

大幸薬品は、即日控訴したそうですが、いかがなものでしょうか。
判決には不服だが、これ以上裁判を継続するには及ばない、と宣言し、裁判費用を広告費用に振り向けて、「ラッパのマーク」の知名度を高める方が良策かと思うのですが。

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