2015年7月13日月曜日

進化論と信仰

最近では、ローマ法王も進化論を認めるようになりましたが、今でもキリスト教右派はその意見に与してはいないようです。

しかし、私は元々キリスト教徒ではありませんが、生物学関係の本を読むと、特定の宗教、というのではなく、もしかしたら神はあるのではないか、と思ってしまうことがあります。

文系の学部を出ていますが、大学受験では理科も受けなければならなかったので、浪人していた19歳まで、物理・化学・生物・地学の勉強はしていました。
結局化学・地学の組み合わせで受けましたが、一番苦手なのは生物でした。

不思議なもので、この歳になると、理科系の本を読むときはたいがい生物学系です。

「ネコはどうしてわがままか(日高敏隆・著)」「生物と無生物のあいだ(福岡伸一・著)」「昆虫はすごい(丸山宗利・著)」などが私のお勧めですが、 偶然の突然変異と自然淘汰で、生物が生きていゆくためのこれほどの精緻な仕組みができるものなのか、という疑問が湧いてきます。

いっそ、神が造った、という方が話が手っ取り早い、と思ってしまったりします。

話は変わりますが、「全能の神」という風には、考えません。
全能であれば、世界に様々な不都合はないはずです。

その点について、様々な神学上の論議があるのですが、私にはそれに触れるほどの学識も信仰もありませんので、避けて通ることにします。

ただ、「造物主」が「親」だと思えばどうでしょう。

正しく育ってほしいと思って導こうとしたけれど、様々な理由で子どもは、必ずしも導いた通りに育ってはくれません。
また、その指導自体が必ずしも正しいわけではありません。

造物主に創造の妙があったとしても、被造物はその後筋書き通りには生きていってくれない。

だからといって、「創造」を否定できるものではないのではないか。

なんとなく、遠回しな自己弁護のような気もしますが……。

2014年10月17日金曜日

営業秘密であることの「否認」とは

報道によれば、ベネッセの顧客情報流出事件で起訴された元SEが、14日の初公判で、流出させた情報が「営業秘密」であることについて、「否認」したとのことです。

起訴された罪状は、「不正競争防止法」違反です。

具体的には、2条1項4号の、

窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(以下「不正取得行為」という。)又は不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為(秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む。以下同じ。)

に該当する行為を行った、というものです。

 被告人は、個人情報を取得し、業者に売却したことは認めているのですが、持ち出した個人情報が、不正競争防止法条の「営業秘密」には該当しない、と主張しているわけです。

「営業秘密」について、2条6項には、以下のように規定されています。

 この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。

前回(7月)にも書いた通り、情報が「営業秘密」に当たるかどうかについての判断基準は、以下の3要件を満たすかどうか、とされています。

1. 秘密として管理されていること(秘密管理性)
2.事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)
3.公然と知られていないこと(非公知性)

7月の段階では、報道から3要件は満たされているのではないか、と考えましたが、もう一度検討してみましょう。

今回持ち出された情報は、買い取って利用した企業があったわけですから、2.の有用性は、否定できないでしょう。

3.に該当しない、として否認するためには、 被告人が持ち出す前に、同じ情報が既に公然と知られていたことが必要です。

「公然知られた」というのは、世の中の人が皆知っていることは必要でありません。
秘密保持義務がない第三者に知られていれば十分です。

 被告人が持ち出す以前に、同じ情報を誰かが持ち出して、売却などをしたことが証明できればいいわけですが、実際は、彼は相当量の情報を持ち出していますから、そのすべてが「公知」であったことを証明することは困難だと思います。

すると、1.の秘密管理性が問題となるのではないでしょうか。

実は、きちんと「秘密管理」することは、簡単ではありません。

守秘義務を定めた勤務規則等がある。
資料に「秘密」の表示が付される。
資料が保管されている部署に、入室制限、記帳義務などがある。
資料の複写・持ち出しが制限されている。
電子情報については、アクセス制限がある。
電子情報にアクセスする際に、パスワードが設定されている。

というように、多様な要件を満たさなければなりません。

たぶん、被告は、これらが不十分だったので、「営業秘密」の要件を満たしていない、従って不正競争防止法には違反していない、と主張するつもりではないでしょうか。

皆さんの会社でも、十分な秘密管理がなされているか、もう一度確認してみてください。

朝陽特許事務所所長 弁理士 砂川惠一  1040052 東京都中央区築地2-15-15 セントラル東銀座703  Tel:03-3278-8405 Fax:03-6278-8406 e-mail:info@choyo-pat.jp









2014年7月15日火曜日

営業秘密について

(2014年7月13日朝日新聞デジタルより)

ベネッセの顧客情報の大量流出事件で、警視庁は不正競争防止法違反の容疑で近く強制捜査に入ります。

営業秘密を不正取得し、それを開示したことが対象となりますが、「不正の利益を得る目的」等を有していたことが必要です。

データを持ち出したとみられるSEが、「お金がほしかったから」と供述しているようなので、この点はクリアできるでしょうが、「営業秘密」であったかどうか、も立証しなければなりません。

裁判例によると、その情報が「営業秘密」であると認められる要件は、以下の3点です。

①秘密管理性 
 ㊙の判が捺され、鍵のかかるロッカーにしまわれて誰が閲覧したか記録されていたり、データベースへのアクセス制限がされてアクセスログが残っているなど、秘密であることがわかり、勝手に持ち出すことができないように管理されていなければなりません。
 会議でコピーを配って、「これは外部に出すなよ」と言った、という程度では、認められない可能性があります。

②有用性
 その情報が、重要な技術情報であったり、他社が持っていない顧客リストであったりするなど、実際に役に立つものでなければなりません。
 秘密に管理されていても、その内容が陳腐になった技術や、古くなって役に立たない名簿等であれば、認められない可能性があります。

③非公知性
 実際に秘密状態であることも必要です。
 上記2要件を満たしていても、秘密管理される前に、不特定多数の第三者の目に触れていたものであれば、認められません。

報道によれば、上記3要件は満たされていたのではないかと思われます。

ちなみに、個人への罰則は、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、又はこれらの併科(両方とも適用すること)です。

ビッグデータの活用の機運が盛り上がってからかなり経ちますが、流出させた人間を罰しても、失った信用は戻りません。
個人を相手に損害賠償を請求できたとしても、十分な回収はまず不可能です。


今回の事件の容疑者のSEも、子会社の外注先の派遣社員ですね。
信用を守るためには、人件費コストをきちんとかけることも必要なのではないでしょうか。

2014年6月18日水曜日

新聞記事の間違いと政策への疑問

今朝の朝日新聞の記事で、「社員の特許『会社のもの』」というものがありました。

まず、記事の問題です。

「政府は、社員が仕事で発明した特許をすべて『社員のもの』とするいまの制度を改め、条件付きで『会社のもの』と認める方針を固めた。」

現行の制度とは、仕事上行った発明(職務発明)であっても、「特許を受ける権利」は最初は発明をした社員のものである」というものです。

「特許を受ける権利」とは、その発明について「特許出願をすることができる権利」のことで、譲渡することができます。

企業は、発明が完成すると、社内規則や契約に基づき、発明をした社員等から、「特許を受ける権利」の譲渡を受け、特許出願をするのが一般的です。

出願書類の作成や手数料の支払いなどは、普通は発明をした社員のやることではありません。

従って、「仕事で発明した特許」が「すべて『社員のもの』」になどなっていません。

たしかに一般人にはわかりにくいかもしれませんが、だからといって、実態と大きく異なるような単純化をしていいということにはなりません。

思考の放棄=考える力の弱体化につながります。


次に、以下の政府方針です(報道が正しいとして論じます)。

「社員に十分な報償金を支払う仕組みがある企業に限って認める方向」 だそうですが、先日の「残業代ゼロ法案と同様、産業界からの要請とすれ違っています。

そもそも、新製品開発を業務として給与を支給されている人間が、発明が特許化されるごとに別途報償を受けることは、本当に正しいのでしょうか。
経理担当の社員が、きちんと決算をするたびにボーナスが出るとしたら、違和感を感じませんか。

そもそも、青色発光ダイオードやテプラなど、後に職務発明の対価を求める訴訟で、企業側が一定の金額を払わされているので、産業界は、いっそ初めから発明は企業のものにしてほしい、と言い出し、当然インセンティブも抑制したいと考えているはずです。

開発に当たり、設備も、材料も、共同研究者や補助者も、すべて会社が経費を負担しているのに、そして、開発業務のために給与を支払っていて、さらに、製品を売って利益を上げるためには、輸送・販売ルート、広告宣伝、材料の仕入れ、製品の在庫など、企業がリスクを負っていのに、何で成果が上がるとさらに報奨金を支払わねばならないのか、というのが企業の本音です。

なのに、 「十分な報償金を支払う仕組み」を求められるということは、企業側の要求とはずれています。
要するに、摩擦を増やす割りには、大した効果が上がらないのではないか、と思っているのです。

末端の多数の労働者の残業も削りたい産業界の要請に対し、「年収一千万円以上」を対象とする、という政策がずれているのと似ています。

誤解を避けるために付言しますが、「産業界の要請」と一致する政策がいい政策だ、と言っているわけではありません。
それなりの摩擦が生じるなら、それに見合った、或いはそれ以上の効果が上がらなければ、変更する意味がない、と言っているのです、念のため。

それにしても、金融政策はインフレ誘導なのに、消費税、TPP、残業代ゼロ、外国人労働者導入などのデフレ政策を次々と打ち出されると、まるでサイドブレーキを引いたままアクセルを踏んでいるように思えてしまいます。

ところで、発明は最初は社員のものですが、著作権は初めから会社のものとなります。
例えば新聞社員の場合、署名原稿であるか否かは関係ありません。

発明の場合は、発明者の名誉は、少なくとも担保されるようにしてほしいと思います。

 朝陽特許事務所所長 弁理士 砂川惠一 
1040052 東京都中央区築地2-15-15 セントラル東銀座703 
Tel:03-3278-8405 Fax:03-6278-8406
e-mail:info@choyo-pat.jp


朝陽特許事務所では、起業家や知的財産権に不慣れな中小企業向けに、手数料のサービスパックをご用意いたしました。


この機会に是非ご利用ください。

2013年12月31日火曜日

本年もお世話になりました

今日で2013年も終わりです。

今年もお世話になりました。

最近は事務所のサイトのTopicsばかり更新していて、blogの更新をさぼっておりました。

なにしろ、その性質上、ネタがかぶるもので。

実際、少しは変えたものの、かぶってしまったものもありました。

事務所のサイトにはなじまないけれど、知財的なネタがあれば、また更新します。

来年もよろしくお願いいたします。

朝陽特許事務所所長 弁理士 砂川惠一 
107-0052 東京都港区赤坂2-8-16 赤坂光和ビル4 
Tel:03-3568-3063 Fax:03-3568-3064 
e-mail:info@choyo-pat.jp

朝陽特許事務所では、起業家や知的財産権に不慣れな中小企業向けに、手数料のサービスパックをご用意いたしました。


この機会に是非ご利用ください。

2013年9月17日火曜日

本名と商標-「加護亜依」商標を考える-

1.商標登録第5287159号「加護亜依」
 日刊スポーツ(nikkansports.com2013年8月21日8時34分)の記事からです。
 
「加護亜依」商標登録済みで本名使えず!?
 元モーニング娘。の加護亜依(25)の活動再開について、前所属事務所側が20日、「加護亜依」の名前を既に商標登録しており、その名前で活動した場合、道義的責任を追及する考えがあることを明らかにした。
 加護は新事務所のもとで活動再開すると発表しているが、前所属事務所関係者はこの日、名前を09年12月11日に商標登録しており、19年まで有効と主 張した。「加護亜依」は本名で、芸名として使用することは問題ないと一部で報じられたが、関係者は「商標登録時点で加護は母方の池田姓を名乗っており、本 名ではなかった」と反論。さらに11年に池田から突然、父方の加護に姓を戻したと説明した。加護が当時一部メディアに移籍を明言した経緯もあり「事務所を 飛び出した後に姓を戻し、本名だから商標登録に関係なく使えるというのは筋が通らない」としている。
 今後、加護を起用したテレビ局などに対して「道義的責任を追及したいので、芸名の使用料を請求する」とも話した。
 
 登録状況を確認してみます。
 
 【登録番号】 第5287159号
 【登録日】 平成21年(2009)12月11日
 【出願日】 平成21年(2009) 2月17日
 【標準文字商標】 加護亜依
 【権利者】
 【氏名又は名称】 株式会社メインストリーム
 【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
 41類 演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,歌唱の上演,ダンスの演出又は    上演,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作     又は配給,放送番組の制作,(以下略)
 前所属事務所関係者の述べた通り、確かに商標権は存在しています。
 さて、では上記の記事を読んで、違和感を疑問を感じた点について考えてみます。
 
2.商標の「使用」についての本名と商標権の関係
 商標権の侵害とは、使用権原のない他人が、登録商標と同一又は類似の商標を、その指定商品又は役務(サービス)と同一又は類似の商品又は役務に使用することを言います。
 しかし、その例外規定として、商標法26条1項1号には以下の規定があります。

 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となっているものを含む。)には、及ばない。
 一  自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標
 
 加護亜依という名前は、彼女の「現在の」本名だそうですから、この規定によれば「普通に用いられる方法」で使用している限りは、商標権は及びません。
 ただし、テレビ局は彼女本人ではないので、番組に彼女を起用した場合に、商標としての使用をすれば、侵害の可能性があります。
 とはいえ、出演者名としてテロップやスーパーインポーズに普通の書体で表示するだけならば、それは商標としての使用(商標機能の発揮)であるのかどうか、微妙なところです。
 
 商標の「使用」に該当するためには、その使用態様により、商標の「機能」が発揮されていなければなりません。
 商標の機能とは、自他商品・役務の識別力その商標が使用される個性化された一群の商品または役務が、他の商品群または役務群から識別できること)を前提とした、下記の3つの機能をいいます。
 
(1) 商品または役務の出所表示機能(誰が、どこの会社がその商品・サービスを提供して  いるかがわかること)。
(2) 商品または役務の品質保証(その商標が付された商品・サービスは、一定の品質が保証 されていると認められていること)。
(3) 広告・宣伝機能(その商標が付されていることを手がかりとして、その商品を購買する、ま たはそのサービスの提供を受ける意欲を起こさせること)。
 
 あくまで、上記の登録された指定役務についての、上記の機能の発揮でなければ、侵害には該当しません。 
 
 ところで、商標法26条には第2項があり、以下のように規定されています。
 前項第一号の規定は、商標権の設定の登録があった後、不正競争の目的で、自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を用いた場合は、適用しない。
 商標登録後に、その商標の信用にただ乗りして、自分の本名を使用することはできません。
 登録後の改姓がこれに当たるのかどうか。
 これも微妙なところです。
 
 ところで彼女は結婚していますが、お相手の男性が加護姓に入っているそうです。
 
3.登録についての本名と商標の関係
 ところで、勝手に他人の本名を商標登録できるのでしょうか。
 商標法4条1項8号に、他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の 承諾を得ているものを除く。)は商標登録を受けることができない、という規定があり、本人の承諾なしに勝手に登録を受けることはできません。
 ただ、当時は本名が池田姓だったということで、「承諾」を得る必要がなかったので、無事登録を受けられたのだと思います。 
 
 現在の商標権の存続期間は、19年2月11日までですが、更新の申請を行えば、さらに10年延長することができます。
 更新の際は「申請」です。
 出願と違い、登録要件の判断はされませんので、登録料を納付して手続きすれば延長されます。 
 
4.前所属事務所はいつまで商標権を維持できるか
 登録商標に無効理由(商標法3条や4条に定められた、登録を受けられない理由があれば、商標登録無効審判を請求することができます。
 審査で無効理由が発見されず、誤って登録された(過誤登録)された商標について、その登録を無効にすべきことを求めて、請求する審判です。
 
 しかし、この商標登録出願時には彼女の本名が「池田亜依」だったのであれば、商標登録無効審判を請求して、無効にするのは難しいかもしれません。

 ただし、3条1項8号には「著名な芸名」も含まれます。

 2000年から2004年ごろにかけて、彼女の所属するモーニング娘。は人気絶頂でしたし、また、彼女は脱退後にも未成年者喫煙やそれによる休業、復帰 などで芸能記事をにぎわしていましたから、出願時の09年2月11日には「著名」であったと判断される可能性もあります。
 加護亜依の名はアップフロントエージェンシー(現・アップフロントプロモーション)所属のころから使用しており、メインストリームに移籍してから使用し始めたわけではありません。
 もし本人の承諾なく出願していたのなら、過誤登録で(ダジャレじゃないですよ)、無効理由があることになります。 
 
 また、商標法50条には、不使用取消審判という制度があります。
 登録商標を3年以上指定商品又は指定役務に使用していなければ、商標登録の取消し審判を請求することができます。
 
 商標の価値とは、商標それ自体にあるのではありません。
 商標を使用したことによって、その商標に業務上の信用が蓄積して、上記の機能を発揮するようになった、その信用を保護するのです。
 ですから、3年も使用していなければ、せっかく蓄積した信用もなくなってしまうので、取り消すことを請求することができるのです。

 指定役務の内容を見ると、歌謡ショーや演劇など舞台関係の公演は、本人がすでにメインストリームに所属していない以上できません。
 所属当時の映像についての権利をメインストリームが保有していて、その上映会を開催すれば、登録商標の指定役務への使用に該当しますが、ビジネスとして成立するかどうか。
 赤字を出してまでやることではないようにも思えます。
 メインストリームが何らかの形で登録商標「加護亜依」を使用しないと、現在の存続期間の満了までに取消し理由が発生してしまいそうです。 
 
5.自分の名前は自分で登録しましょう
 この文章をお読みの方の大半は、プロダクションに所属して芸能活動を行う予定はお持ちでないでしょう。
 ですから、自分の本名を登録することについては、心配は要らないと思います。

 しかし、自分の(勤務する)企業名称や、商品名・サービス名について商標登録がされているかどうか、他人が類似の商標権を保有していないかどうかの確認は、一度なさった方がいいと思います。
 自分の会社名、商品名、サービス名をブランドとして育てていくためには、独占排他権である商標権の取得は不可欠です。

 そこで、自分が会社を設立したり、新商品新サービスの提供を始めたりする前には、その商標が登録要件を備えているか(独占排他権である商標権を取得できるか)、他人の類似の商標権が存在していないかどうか(その商標を使用できるか)を確認しておくことが重要です。 
 
 出願と登録にかかる費用は、指定商品(役務)が1つであれば、当事務所では総額12万円~15万円程度で(調査費込み)、登録されれば商標権は10年間存続します。
 1年分はその10分の1です。

 後から争いが発生すれば、場合によってはそれをはるかに超える費用がかかります。
 転ばぬ先の杖として、まずはお気軽に、ご相談ください。
 
特許・実用新案・意匠・商標の出願、その他申請、知的財産についてのご相談、承ります。
朝陽特許事務所   http://www.choyo-pat.jp/
弁理士 砂川惠一
 
発明品のマーケティング・広告宣伝から、ビジネスモデルの構築も含め、何でもご相談ください。
パテントマップを活用した特許戦略の構築等も承ります。
弁理士試験受験者のカウンセリング、口述試験の個人指導など、ご希望の方がいらっしゃいましたら、ご連絡ください。

107-0052
東京都港区赤坂2-8-16赤坂光和ビル4階
Tel:03-3568-3063 Fax:03-3568-3064
お問い合わせフォーム


研修、講演、コンサルティングはこちらへ→ http://scp-consulting.blogspot.com/
 
 
 

2013年7月1日月曜日

起業家のための商標登録のすすめ ~後出しじゃんけんに負けないために~



1.自分の社名に差止請求?

ある法人Aのお話です。
法人Aは平成179月に都内で開業し、数年間営業努力を重ね順調に業績を伸ばしてきました。
ところが平成22年になり、突然、社名の使用の差止と損害賠償を請求する裁判を起こされてしまいました。
根拠となった商標権は、Aの開業後の平成17年の11月に出願され、翌年の6月に登録されています。
原告は、個人である商標権者Bと商標権者から独占的通常使用権のライセンスを受けた関西にある法人Cでした。
その法人Cが、その登録商標を使用し始めたのは、平成18年の2月です。

その裁判でA1審で敗訴し、2審の途中で1審での認定額より多い賠償額で和解することになってしまいました。

また、個人経営で平成1111月から開業していたDに対し、平成185月に出願し翌年の6月に登録された商標権に基づいて、法人Eから屋号の使用停止を求める内容証明郵便が届いた件もあります。
使用停止を求められたのは平成23年のことです。

Eの商標登録出願時に、D6年半ほど屋号を使用しており、使用停止を求められた時点では約12年も経っていましたが、やむなく平成241月に屋号を変更することになってしまいました。

確かにAの件も、Dの件も、登録商標との類似、指定商品・役務との同一性から、形式的に商標権の侵害は成立します。

けれど、自分の方が早くから使っていたのに、また、そもそも自分の営業主体の「名称」であったにもかかわらず、他人の商標権を行使されてしまったのでは何故でしょうか。

2.商号と商標の関係

起業する際に、個人商店であろうが、法人であろうが、必ず「商号」は使用することになります。
法人で起業する際には、会社の登記を行いますが、その際の会社名が「商号」となります(会社法61項)。

新会社法の施行に伴い、他人が登記した商号を同一市区町村内において同一の営業のために登記することができないという規制(旧商法第19条、旧商業登記法第27条)は廃止されました。

他人の登録を排除する効力としては、登記した商号と同一であり、かつ、その営業所の所在場所が同一である場合という、狭い範囲にしか及びません(商業登記法27条)。
他人の使用を排除する効力としては、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用した場合に、差止請求ができます(商法12条)。
また、他人の商号として周知なものと同一又は類似の商号を使用等して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為は、不正競争として差止の対象となります(不正競争防止法21項、31項)。
つまり、商号の場合は事前的(登記)効力を生かして他人の使用を差止めするためには、他人に「不正の目的」があることを立証することが必要です。
不正競争防止法の場合は、あくまで事後的な措置となり、基本的には裁判所の判断を仰ぐことになります。まず自己の商号の「周知性」の立証、そして「混同」の立証が必要となります。

登録商標であれば、出願し審査を受けて設定登録された場合は、その段階で権利が保証されます。
他人の登録を排除する効力としては、登録商標同一又は類似の商標であって、その商標登録に係る指定商品・役務と同一又は類似の商品・役務について使用をするものは、登録を受けることができません(商標法4111号)。
他人の使用を排除する効力としては、登録商標と同一又は類似の商標であって、その商標登録に係る指定商品・役務と同一又は類似の商品・役務について使用をすると侵害となり(商標法25条、371号)、差止の対象となります。
つまり、事前的(登録)手続きだけで、「不正の目的」や「周知性」、「混同」を立証する必要もなく、商標と指定商品・役務の類似範囲まで差止めすることができるわけです。
そして、効力範囲は日本全国に及びます。

3.先使用権などが認められない場合とは

前項で述べたとおり、従来は旧商法第19条と旧商業登記法第27条により、自己の商号と類似の商号が同一市区町村内において同一の営業のために登記されてしまうことはありませんでした。
しかし、改正後は自己の登記した商号と同一であり、かつ、その営業所の所在場所が同一である場合以外は、たとえ隣のビルであっても登記されてしまいます。

また、それに伴い後から商号登記した他人が、先に商標登録出願をした場合、自己の商標としては未登録の商号が、隣接県で周知性を獲得しているレベルでなければ、他人の商標が登録されてしまい、場合によっては使い続けてきた商号を使用できなくなる場合があるのです。

商標の場合、先使用権(商標法32条)は、他人の登録商標の出願前に隣接県レベルの周知性を獲得していなければ認められません。
この立証は、実際はかなり困難であり、その手間と費用は商標登録にかかる手間と費用の何倍にもなるのが普通です。

また、商標法26条に商標権の及ばない範囲として「自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標」が定められていますが、例えば、会社名から「株式会社」をはずした表記は「略称」となってしまい、26条で保護を受けるためには「著名」であることが必要となります。

商標なら、「株式会社」抜きで登録することができます。
「著名」であることは必要ありません。

これから起業なさる皆様が、順調に業績を伸ばした後で、後出しじゃんけんに負けるような形で、社名、店名、商品名などが使えなくなると、信用回復にはたいへんな手間と費用がかかります。
また、後出しじゃんけんではなく、起業前に考えている社名と類似の社名などが、既に同業者によって商標登録されている場合もあります。
この場合は、営業を開始するとともに、商標権侵害状態が始まってしまいます。
そして、順調な業績を積み上げた何年後かに、他人にその果実を摘み取られてしまうかもしれません。

起業はたいへん忙しいものですが、社名の事前調査も含めて、商標登録出願をご検討なさることをおすすめいたします。

4.費用について

印紙代は、出願の際に1出願につき3,400+指定商品・役務1区分につき8,600円、登録の際は指定商品・役務1区分につき37,600円(10年分)です。

弁理士を代理人として出願する場合は、別途手数料がかかります。

私どもでは、起業家や知的財産権に不慣れな中小企業向けに、手数料のサービスパックをご用意いたしました。


この機会に是非ご利用ください。

朝陽特許事務所所長 弁理士 砂川惠一 
107-0052 東京都港区赤坂2-8-16 赤坂光和ビル4 
Tel:03-3568-3063 Fax:03-3568-3064 
e-mail:info@choyo-pat.jp